客学_Colamn_Pharmacoeconomics | 医薬品流通経済研究

医薬品流通経済研究

TOP I about us I contact I
印刷用表示 |テキストサイズ 小 |中 |大 |



All Rights Reserved,Copyright(c) 2009 Hiromichi Sumida

HOME > Column医薬分業 > Column_医薬分業10

医薬分業 10

調剤薬局とドラッグストアー

え、違うの?
どっちも薬売ってんじゃない。
その通り。

この差異を明らかにする定説的なものはない。

敢えて言えば、日本保険薬局協会と日本チェーンドラッグストア協会の違い。

日本保険薬局協会は、「社会構造の中での保険薬局業態の確立と育成」など。
日本チェーンドラッグストア協会は、「チェーン化を指向するドラッグストア業態の産業化の推進」など。

この教室(医療経済学教室)で客員教授をお願いしている企業についてみると、

高柳客員教授の富士薬品は、どちらにも加入されている。
塚本客員教授のセイジョー、三津原客員教授の日本調剤は、日本保険薬局協会にしか加入していない。

有名なマツモトキヨシは、日本チェーンドラッグストア協会にしか加入していない。

この2つの団体の違いは、流通業の中では、業態が異なるとされる。

チェーンドラッグストアの区分では、NO.1は、マツモトキヨシ。
保険薬局(調剤薬局)部門では、日本調剤がNO.1。

このどちらのカテゴリーでも、独立薬局は衰退傾向。
ビジネスとしてみると、大量仕入れができないということは、致命的な欠陥。
ただ、お名前を出して恐縮だが、東大竜岡門前の水野薬局のようなところは、その特異性の故にキチンと存在し続ける。

巨大ドラッグストアチェーンが支配しているかに見えるアメリカでも、独立薬局は薬局数の4割を占めるといわれる。

日本では、このままいくと、電気屋さん、八百屋さんなどと同様、独立薬局は衰退産業の典型になってしまうかもしれない。

ドラッグストアと調剤薬局。
この区分のキーワードは、「処方箋」。
医薬分業という視点でみると、処方箋中心の保険(調剤)薬局が分業推進の中心。

ドラッグストアは、ヘルスケア関連の日用雑貨のディスカウントショップ的なものが多い。

かつて、ダイエーの衰退が語られたとき、「安ければ、客が買う」という時代が終わったのに、店頭に客の興味をひかない「目玉」商品を陳列し続けたことが衰退の原因であるといわれた。

ダイエーは、その初期、電気屋チェーンを背景に安売りをしない構造を作り上げた松下電器など大手家電メーカーと戦い、消費者主義を貫徹させた。

他方、一方の旗頭であるヨーカドーは、消費者が求める商品ということが中心であったといわれる。

今のドラッグストアをみていると、ダイエーの初期を想起させる。

今の形がこのまま続くか?

富士薬品の高柳社長が客員教授として、講義いただいた際の資料がある。

まず、15年前のドラッグストア・調剤薬局 売上高ランキング。

ranking.jpg


メンバーもさることながら、売上高NO1が200億円に達していないという驚きがある。
15年で、ここまで様変わりする。

見る人によって感慨は様々。

雑感風にいうと、

これからの10年、いや5年でこれがどう変わるか。
例えば、このランキングにないものが既に誕生している。
ココカラファインホールディングス。
セイジョーとセガミメディクスが共同持株会社ココカラファインホールディングスを設立。単純に2007年のランキングに当てはめると、5位程度に該当する。

1位のマツモトキヨシのこの業態での市場占有率は、5%を超えない。
これまでの流通業一般のトレンドをみればわかるように、第1位の会社の占有率がこのままであることは考えにくい。

よくいわれるクリティカルマス。生き残るための売り上げの絶対額は、2000億円とも3000億円ともいわれる。

であれば、上述の表は、5年を待たずして激変するであろう。

調剤薬局では、業界1位の日本調剤の市場占有率が2%を超えないといったことを見ると、企業がどのような形で残るかは「神のみぞ知る」ということだろう。

調剤薬局、ドラッグストアといった形で、薬が病院の外で扱われるようになり、株式会社の論理で物事が進行するようになる。

病院ごとの医薬品売り上げランキングはなかった。
外に出ると、企業体ごとのランキングができる。

マーケットメカニズムがより一層鮮明に機能してしまう。
「しまう」というと、なにやら残念であるといったニュアンスを感じるかもしれない。

株式会社でもできるのが、薬局。

この感覚を続ければ、薬局の経営に関しても、「営利」法人がやってはいけないことにしようというアナクロニズムにも似た議論となる。

医療機関を法人格として運営するためには、営利法人はできず、医療法人という非営利法人でなければ運営できない。

余計なことだが、法人格では非営利と営利を厳密に議論するのに、私人の場合、非営利私人などというものがあるのだろうか。

ともあれ、医療法人の論理ではなかなか生まれなかった規模、株式上場といった概念が入ってくる。

ケシカラン、ですか?

医療の周辺には、薬局だけでなく、製薬企業、病院給食、検査などの分野で既に多くの「営利」企業が活動している。

法律上の位置づけとしていえば、薬局だけが医療機関だ。
正確にいうと、「調剤を実施する薬局」は、「医療提供施設」(医療法第1条の2)。

伝統的な医師会の論理からいえば、薬剤師会へ申し入れ、共闘。

現在進行中の医薬分業は、薬局が大規模小売商の世界に入ってしまったという結果になった。

次のページへLinkIcon

ページの先頭へ