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医薬品流通事情-日本とタイ 65

3.医療費保障政策の継続性

(1)民間部門をどのように取り込んでいくか。
 

  • タイの医療供給は、公的部門に依存している。
  • ユニヴァーサルカヴァレッジの医療費保障制度を始めた現在、その傾向はさらに著しくなっている。
  • 公的病院の祭りかと思えるほどの人出をみると、需要の爆発といってよい。
  • こうした爆発に公的病院は献身的に応えている。
  • 「医療機関は疲弊している」とのご託宣が先ごろ日本でもでたが、タイの公的医療機関をみると、疲弊というレベルを遥かに超えていると思う。
  • 日本の場合、公的医療費保障制度により、保険料の形で財源を集め、診療報酬制度の中で、民間医療機関に還流させ、民間部門を充実させていった。
  • タイの制度では、民間部門の設備投資をどうするかという問題は解決の糸口すら見えていない。
  • タイの医療費、医療制度を継続的に支えていくために、どのような形で民間部門に資金を投下するかが問われている。

(2)財政的な継続性

  • タイの医療は、これまで、驚くべき低コストで維持されてきた。
  • その意味では、医療費圧力がどんなものかという実感のないまま推移してきたといってよい。
  • 日本の場合、美濃部都政による老人医療費無料化で、老人医療費が爆発した。
  • 当時、それ以降の人口の高齢化を考えると、医療費の爆発は国家社会にとって恐るべきものになるという現在の主題が先取りされたと考える当局者がかなりおり、曲がりなりにも、日本の医療費は国力をやや上回る範囲で推移してきた。
  • 皮肉なことだが、美濃部都政のばら撒き行政が一種の警鐘になったといえる。
  • タイの場合、高齢化のレベルが既に社会実験をやるには高すぎるところまで来ている。
  • 今後の高齢化を考えると、あまりにも重い制度を作ってしまったのではないかと他国のことながら危惧せざるをえない。
  • タイからの研究員は、医療制度などの効率化のレベルで対応できるかもしれないといった認識が強く、なんとかなるという考えた方をするものが多い。
  • 老人医療費の爆発から半世紀を経た日本の例をみると、制度の基本設計に立ち返り、再構築をしなければ、「崩壊」の危険性があると思う。
  • このことについて、論点は沢山あるが、ここでは触れない。次の研究員と議論を深めた上で再論したい。

(3)制度間の不均衡

  • ユニヴァーサルカヴァレッジといいながら、公務員(CSMBS)、勤労者(SSS)などについて、特例的な制度があることはご紹介した。
  • ユニヴァーサルカヴァレッジの中では、平等ということだが、公務員制度などでは全く異なった運用がなされている。
  • これからの医療費圧力を考えると、こうした制度間の不公平をいつかは正す必要がある。
  • ここでも、研究員の言葉を借りる。
  • It is interesting to see who in the government will have enough guts to stand up and confront the truth and come up with compromising but concrete steps of transformation to the united system.
  • こうした重い課題は、政だろうと官だろうと、破天荒な勇気がいる。
  • 既得権をどうするかという制度設計は官でもできる、問題は、既得権に立ち向かう政治の勇気だと思う。
  • どこかの国では、官のなすべきところに政が入り、政がなすべきことがともすれば忘れられているような風潮がある。
  • 政治は最高の道徳といわれる。権利と権利とのぶつかり合いに関し、徳をもち調整するのがその役割だと思う。血で解決しなければならなかった問題を話し合いで解決するのが政治。政治を技術だけで語るべきではないと思う。

タイでは、いまのところ、政も官も制度間の不均衡問題には手をつけられないでいる。

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