厚生労働省再編 02
現在の厚生労働省は巨大な官庁だ。
現在の組織と元のものとを比較してみる。
厚生省。
正確を期すると、役人的煩瑣な世界に入るので、本省の局についての基本である「組織令」(政令)の範囲で整理する。
本省と社会保険庁とで構成され、本省には、大臣官房のほかに9局あった。
①健康政策局 ②保健医療局 ③生活衛生局 ④医薬安全局 ⑤社会・援護局
⑥老人保健福祉局 ⑦児童家庭局 ⑧保険局 ⑨年金局
労働省はどうだったか。
大臣官房の他に5局あった。
①労政局 ②労働基準局 ③女性局 ④職業安定局 ⑤職業能力開発局
この2つを単純に足し算すると、5+9=14になる。
この当時の再編統合の論理は、縦割りによる弊害をなくし、事務及び事業の減量といったことだった。
具体的には、それまでの1府22省庁が、1府12省庁になった。
ということからすると、5+9=14というわけにはいかない。
大臣官房のほか、11局という体制となった。
できあがりは、マイナス3。
①医政局 ②健康局 ③医薬食品局 ④労働基準局 ⑤職業安定局
⑥職業能力開発局 ⑦雇用均等・児童家庭局 ⑧社会・援護局 ⑨老健局 ⑩保険局 ⑪年金局
煩瑣な所管事務については省略させていただく。
厚生省の分野では、健康政策、保健医療、生活衛生、医薬安全の4局が、医政、健康、医薬安全の3局に再編され、マイナス1。
老人保健局、社会・援護局、保険局、年金局は基本的に横滑りでプラスマイナス0。
児童家庭局は、単純にいうと、労働省の労政局、女性局と統合された形。
労働省の分野では、労働基準局、職業安定局、職業能力開発局が横滑りで、ここだけをみると、プラスマイナス0。
労働省の労政局、女性局、厚生省の児童家庭局が結果的には一つになったということで、マイナス2。
元役人のオタク的なものの見方をしてみると、労働省の労政局というところは、局並みの「政策統括官」をおくことによって辛うじて残ったという形になっている。
役所での「出世」の上がりは事務次官だが、一応の目標は局長。
役人にとって局というものは外の人からみると異様なくらい重い。
局をなくするのは当の役人にとっても重いが、その局に代表される職域、業種の方々にとっては、議員会館を歩き、国 会議員の先生に陳情するほど重い。
例えば、厚生労働省の医政局は医師会を所管する。
仮に、医師あるいは医療機関を所管するものが「局」でないということになると、さあ大変。筆者が役人ならば考えもしないだろう。
さらに、各職域の具体論だと、「局」の下の「課」が問題。
現在の医政局では、看護課、歯科保健課がある。
読んでおわかりと思うが、看護課は看護師の職業領域を扱う。
歯科保健課は歯科医師の職業領域を扱う。
どういう課を置くかは、必ずしもロジカルな議論ではない。
役人時代、筆者としての初めての法令協議(各省が法令の改廃を行う場合、所管の重複などを排除するために協議する)が農林省(当時)の野菜課のニンジン係に関するものだった。
この課は現在、農林水産省生産局というところにある。
こうした職域あるいは産業域をどう考えるか、なかなか難しい。
その社会にとっての重要度、影響力、政策的必要性など諸々のことを考えねばならない。