医薬分業 05
調剤が薬剤師の手から離れる
この傾向に拍車をかけたのが、国民皆保険。
この制度の下で、国民は全員なんらかの形で公的保険に加入。
それまで、役人や大企業の社員以外は、基本的に自由診療であった。
医師は「患者の懐具合を心配する」必要があった。
「赤ひげ」、金持ちから多く頂戴し、豊かでない層からは、ほどほどにという慣行があったことは否定できない。
古いお医者さんからは、農村部では、野菜が診療の見返りであったといった話を聞いたことがある。
国民皆保険は、診療さえすれば、医療費の支払いは、公的に保証されたも同然という制度だ。
レセプトと呼ばれる診療報酬請求書を提出すれば、健保組合や市町村から医療費が支払われる。
医師にとっては、革命的な状態となった。
この当時、開業直後でも、収入が平均的サラリーマンの50~100倍の収入があった。
当時のことを回想して、「毎晩クラブに行っても使い切れなかった」と言われる方もいる。
開業医にとっての黄金の日々。
成長する日本経済の正当な分配という側面もあったが、「医師か、アラブの金持ちか」といった批判も生まれる。
国民皆保険までは、医療用の医薬品の半分は、町の薬局で売られていた。
ここでは、薬局は、現在の開業医と同様の機能を果たしていたといってよい。
開業医が直接薬を投与し、街の薬局から、薬が離れた。