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医薬品流通事情-日本とタイ 17

1992年、特許法が改善された。
それまでの15年の保護期間が20年となり、製造過程特許という珍妙なものから、物質そのもの(chemical entity of the medicine)が保護の対象となった。
この改定は、アメリカの圧力による。
外交のあり方として、アメリカとしては手なれたものだと思うが、GSPとの交換取引というものだ。

GSP。
Generalized System of Preferences。
デジタル大辞泉によると、「一般特恵関税制度」と翻訳される。
1970年、国連貿易開発会議で創設された制度。
アメリカ政府のOffice of the United States Trade Representative のweb-siteでは、"program designed to promote economic growth in the developing world by providing preferential duty-free entry for about 4,800 products from 131 designated beneficiary countries and territories”とされ、最恵国待遇よりも低い関税率を適用して、開発途上国のアメリカに対する輸出を優遇し、途上国の経済発展を促そうとする制度。

外交として面白いと思うのは、「アメリカに輸出したいのなら、特許をちゃんと守れ」という現実的な対応。
「正義」があるのなら、言い続ければよい」というどこかの国の方法論。
日本に真の意味での「外交」があったのは、日露戦争時だけだという指摘。
ODAなどについても、ホントーに「援助」するだけで、適切な見返りを求めない、あるいは、互恵的な関係を築いていく気がない。
出先の外交官と称する人々がいい顔ができるだけのためのものなのかと疑いたくなる(東南アジアへの出向者の方々(外務省以外)の話を聞いていると、そんな印象を持つ)。
タイ国駐在の日本大使殿が帰国の際、ANAは普段は使わないファーストクラスの飛行機を使用したとのこと(タイの日本人社会で冷笑的に語られる話題)。
こうした「配慮」にふんぞり返っているのではなかろうか。
内に強く、外に弱い外交。

タイの外交を見ていると、乱暴だが、「取引」はなさっているように思える。

1993年、日本の自賠責にあたる制度が始まった。
基本的に患者が医療機関に自腹で支払いをし、その後で保険会社に請求するという形。
この制度は、後で出てくるNHS(National Health Security)とどのように調整するのか、実際のところちゃんとした整理が行われていない。

日本の場合、自賠責の方が1点単価として高額なせいもあり、医療機関側は喜んで、自賠責業務の区分を行う。
タイの場合、こうした誘因もなく、混沌としているといってよいようだ。

年表的にだらだらと続けてきたが、タイの医療関係について、時期区分をしてみたい。

第1期は、1901年から1960年代まで。
この時期は、実効的な法制度が殆ど整備されていない時期といってよい。
因みに、1901年、タイは政府自身が西欧医薬品の生産を始め、政府の製薬企業といえるGPO (Government Pharmaceutical Organization)が設立されたのが1936年。
GPOという官立製薬企業については、後で触れるが、殆どの関係者にとって、その存在自体が「問題」、というもの。

第2期は、1970年代から1990年代半ばまで。
いくつかの医療費保障制度が創設されたこと、特許問題について、主としてアメリカからの圧力により、それなりの対応がなされた時期。
この国の高度経済成長期にあたる。

第3期は、1990年代後半から現在まで。
研究員のレポートの表現を借りる。
"Later in 1990s, the influence of globalization moved slowly into Thai pharmaceutical business.”
タイのNO1製薬企業の会長とお会いしたとき、“the world is shrinking now"と言われたことが強烈な印象として残っている。
1990年代に入り、タイの製薬企業は、低価格、比較的高い品質の医薬品という形で近隣諸国に輸出を始めた。

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