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医薬品流通事情-日本とタイ 18

グローバライゼーションの明るい局面。

他方で、インドのジェネリックメーカーが自国民に安価で安全な医薬品の供給を続けることで、国際的な価格、品質競争力をつけ、アメリカ市場にまで進出している。
こうしたインドのメーカーは、結果として国際化を強く志向し、供給の絶対量が大きいことから、タイを始めとする東南アジア市場へも進出してきている。
グローバライゼーションの消極的側面。

インドのメーカーがタイでも恐れられているのは、次のようなことがあげられる。

1.インドのマーケット規模
インドの2001年の国勢調査で、人口10億2702万人。
一人あたりのGNIが822ドル(2008年、インド政府資料)。
*中国の13億人、一人当たりGDP2460ドルに比べると少し見劣りするが低所得マーケットへの対応を真剣にやれば、価格競争力が出てくる。
1昨年、世界ジェネリック大会に出席した際、インドのメーカーの方が「国内対応を真剣にやってきたら、価格競争力がついてしまいました」という趣旨のことを言われた。
これだけのマーケットに供給するとなれば半端な量では問題にならない。
ジェネリックの基本の一つである絶対量を自国民への供給を通じて確保したことが大きい。
日本のジェネリックメーカーもそれなりの供給能力を持つが、1薬品あたりの売り上げ高が多くても数億円というレベル。
日本のジェネリックメーカーは、数が多すぎ、結果として1剤あたりの生産量が少ない。
当然のことながら、生産性は極めて低い。
今のままでは、「廉価」というジェネリック医薬品の最大のメリットを発揮できるような水準には至らないと思われる。
しつこいようだが、膨大な人口に多量のジェネリック医薬品を供給し、それを梃子に海外進出するといったロジカルな展開を考えるというインドのモデルは大事だと思う。
日本のマーケットにヌクヌクと安住し、結果として「廉価」でない医薬品を供給し続けることは、いつまでも許されることではない。
日本のジェネリックメーカーは、国際化の意味が分かっていないのか、国際競争力がないことを自覚しているのか。

2.知的能力
サンスクリット語は世界で最も論理的な言葉といわれる。
ジェネリック医薬品の製造、あるいは医薬品の原末製造の際、徹底的に「思考」し製造過程をどのように合理化するかという知的作業に向いている。
医薬品の殆どは化学物質。
反応過程、原材料の選択など分子構造からロジカルに考えると、工程数の削減、安価な原材料といったことで「廉価」を達成できる。

3.アメリカ市場への進出
アメリカ、特に、FDAへの対応が進んでいる。
よくいわれるように、FDAへの対応のうち、最も大切なのは、「きちんとした英語がしゃべれること」。
インドはイギリス植民地であったこともあり、英語能力は世界的に定評がある。
*今年(2009年)の7月、第一三共の原末製造工場を見せていただいた(先発品メーカーの製造部門は、後発品のそれより遥かに優れていることを実感した)
その際、FDAの視察の話になり、「1.に英語というのは、そのとおりですが、工場視察の際の2.XXL被服も重要な要素です」と笑いながら言われた。
FDAにもかなりの太目の方々が多いようだ。

4.投資に対する積極性
かつて、高度経済成長時の日本がそうであったように、現在のインドはマーケット、工業能力の拡大を背景に「強気」の投資活動が続いている。
イケイケの時期であることとグローバル展開が生き残りのために必要という経済ロジックがしっかりしている。
インドの友人と話しをすると、「インド人はロジカルといいますが、マネーに関してはextremelyですよ。」とのこと。
2ケタの九九がある国。


第3期について、出来事順に続けます。

1995年、ASEANのFTA(Free Trade Agreement)が発効し、実施された。
タイの医薬品企業は、自分たちの製品が、価格、品質面で比較優位に立つと考え、近隣諸国への輸出に真剣に取り組み始めた。

日本のジェネリック企業は未だに1錠も輸出しておらず、輸出の検討すらしていない。
ある大手のS製薬のトップは、「厚労省に守られていますから、輸出のようなことは検討する必要がありません」といった発言をされている。
役所の諸君に訊いてみたら、「日本のジェネリック企業をこのままの形で保護しようと考えているものはいない」とのこと。
困ったものだ。

2000年、ASEANは医薬品のGMPについて、WHO基準とすることを合意した。
タイではこれに従い法律改正をしたが、不思議なことに未だ公布されていない。

2002年、National Health Security(NHS)が始まった。

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