医薬品流通事情-日本とタイ 19
医療費保障制度について、NHSが始まるまでの道のりを年表にしてまとめてみる。
1910 Private insurance
1974 Workmen’s Compensation Fund
*労災に該当する制度
1975 MSWP : Medical Service Welfare for the People Project
(Medical Service for the Poor People)
*救貧医療
1978 CSMBS : Civil Servants Medical Benefits Scheme
*国家公務員のための医療費保障制度
1983 VHIP : Voluntary Health Insurance with Government Subsidies
*日本風にいえば、国民健康保険制度の試行プロジェクト
1990 SSS : Social Security Scheme
*被用者、サラリーマンのための健康保険制度
1993 Compulsory Motor Vehicle Accident Victims Protect Project
*自賠責
2002 National Health Security
上記のうち、MSWP(貧窮医療)は、現在のNHSに統合された。
VHIPは、現在のNHSの準備段階のものといえ、当然のことながら、現在は実施されていない。
日本の国民皆保険が1961年のことだったことと比較すると、発展段階に相当の差があることがおわかりいただけよう。
医療費保障制度だけでなく、医療供給体制そのものも未熟なままユニヴァーサルカヴァレッジの制度を実施してしまうというのは繰り返すが、いかにも性急だ。
いきなりといっていいほど突然ユニヴァーサルカヴァレッジの制度を始めたこの国だが、医療費の高騰という問題に直面しなかったわけではない。
前述したように、CMBSは公務員のための医療費保障制度。
研究員の記述を借りると、“most generous health benefits scheme”ということになる。
確かに、generous、太っ腹。
この制度の対象となるのは、
・公務員本人
・配偶者
・両親
・子供、但し、3人以内、20歳まで。
対象となるサービスは、
・外来
・入院
・処置、手術
・医薬品
・年1回の健診。
公的医療機関での受療はfree to access。
私的医療機関での受療も可能。
一旦医療機関で治療費を支払うが、全額償還される。
治療費の基準は出来高払い(fee for service)。
治療費の償還限度額はない(青天井)。
おわかりいただけると思うが、この制度の医療費の伸び率は凄まじい。
1988年から1997年にかけて、医療費の伸び率は、年間12~33%という、日本の厚労省の担当者なら、腰を抜かし、青くなるような結果となった。