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医薬品流通事情-日本とタイ 08

タイの農業生産のGDPに占める割合は今後も減り続けると思われる。
ただ、生産性といった軸を入れてみると、農林水産業は相当程度おちこんでいくのではないか。
その結果、都市化しているバンコクとup-countryといわれるバンコク以外の地域では、大きな格差が生まれ、産業構造、所得、就業者などの様々な分野で二重構造が極端な形となっていくのではないかと思う。

かつて、日本も産業の二重構造、都市と農村の格差などが問題となった時期があり、地方交付税などの施策を施すことにより、都市で稼いだ富を地方に均てんしていくといったことでなんとか凌いできた経緯がある。

日本型がよいとは限らないが、なんらかの調整装置を作っていかないと、ただでさえ不安定なタイの政治経済が相当の混乱に陥ってしまうのではないかとすら思う。

調整装置といえば、タイ在住の外国人の目からは、極めて奇異に写ることがあるようだ。
タイの政情はいろんな報道にもあるように、不安定であるとされる。こうした不安定は当然のことながら、相争う当事者がいるから。
で、奇異に感じられることは、政争の道具として憲法が使われることだ。
反対派が政権につくと、それまでの政権に利したと見られる憲法を変更してしまう。
タイの憲法の歴史をみると、かなり「騒がしい」。
どのようなものか。
タイの最初の憲法は、1932年、立憲革命により、専制君主制から立憲君主制にへの移行が出発点(暫定憲法)。
その同じ年、反動があり、結果として立憲、恒久憲法が策定された。
この後、出発点の憲法をあわせ、17の憲法が策定されている。
その内訳は、暫定憲法(条文数100以内)が8つ、恒久憲法(条文数概ね100以上、最大条文数336)が9つという賑やかさ。
一つの憲法の寿命は、短いもので、6ヶ月、長いもので13年、平均5年足らず。
2006年にクーデターが起こったとき、国際的に何故「クーデター」なのかという大きな疑問符が出た。
リクツをいうと、政権交代でなく、レジームの交代であり、クーデターなのだということらしい。
筆者の一応法学部卒。
政権が交代する度に新憲法といっても、近代の憲法の枠組みでは、事の本質を大きく変えるのは困難なのではないかと思う。
ドタバタと変わっていく憲法だが、いくつかの憲法では「改正」も行われている。
改正回数を単純に足し算すると15回。
実に忙しい。
タイの方々に伺うと、憲法というものの受け止めが若干緩い。
心の底では、専制君主的なニュアンスを持ち、これが国の大本。
憲法はそういう意味では、政争の道具ということだという説。

どこかの国では、様々な論争があるものの、結果として、半世紀以上も一字一句変更されていない憲法を有する。
特に、その9条を巡っては、学生時代、「憲法の変遷」なる珍妙な解説を受け、字句の変更がないものの「解釈」は「変遷」したのだと聞かされた覚えがある。
こうした変遷を語るのとタイの状況、筆者の目ではどちらも「アジア的」と写る。

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