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医薬品流通事情-日本とタイ 14

医療インフラの次は、医療費。

国民医療費。

現在、タイからの研究員が中間レポートを作成中。
タイの統計事情などについて多くを語るより、このレポートを和訳した方がニュアンスを正確に伝えられると思う。

以下、国民医療費についての研究員レポート抜粋(翻訳責任は筆者)。

医療支出(health expenditure)の把握はタイ政府にすら極めて難しい。
というのは、信頼に足るデータ収集、閲覧システムがなかったからだ。
国民医療勘定(national health account)を作ってみようという試みさえ、たかだか14年前に始まったばかりだ。
国民医療勘定の数字の確定ができているのは、2001年まででしかない(国民医療勘定報告自体は2005年版まであるが、データとして確定しているのは、2001年版まで)。
残念なことに、この国民医療勘定のデータには、薬剤費支出の細目が示されていない。
こうした国民医療勘定作成を永続的にサポートする仕組みがない。それのみならず、この作成に責任を負う永続的な組織もない。
各医療機関からのデータを収集するのは次のような理由のため困難だ。
1)各医療機関のデータ形式(format)が異なる。
2)各医療機関、データ収集機関(agency)相互の連携ができていない。
3)データ収集機関自体の統一性がない。
(筆者注)データ収集機関

  • 国民医療勘定は、医療システム研究機関(Health System Research Institute(HSRI))が行うプロジェクトとして1995年に始まった。
  • このプロジェクトは、次の3つの期間に分かれ、各々の期間、異なった大学、機関が担当している。


○期間1

  • 1994版は、以下の大学等が共同して担当した。
  • 1.チュラロンコン大学公衆衛生学カレッジ 
  •  (College of Public Health Science, Chulalongkorn University)
  • 2.タイ国統計局
  •  (National Statistical Office of Thailand)
  • 3.公衆衛生省官房政策戦略部
  •  (Bureau of Policy and Strategy, Office of Permanent Secretary of Ministry of Public Health)
  • 4.チュラロンコン大学人口研究カレッジ
  •  (College of Population Study, Chulalongkorn University)
  • 5.社会経済機関
  •  (Office of the National Economic and Social Department Board)

○期間2

  • 1996年及び1998年版は、チュラロンコン大学公衆衛生カレッジが担当した。

○期間3

  • 1995年、1997年及び1999年以降版は、タイ国国際医療政策プログラム
  • (The International Health Policy program Thailand)が担当した。
  • タイ国国際医療政策プログラムは独立法人。所属省庁はない。
  • この稿を辛抱強く読んでいただいている方なら理解いただけると思うが、医療費支出がどのくらいあるのかといったこと、あるいはその把握は極最近の出来事に属する。


国民全体としてどのような医療費を支出しているかという問題が最近に至るまでこの国ではそんなに重要ではなかったということだ。
日本で大正時代労働者を対象とする健康保険制度ができた頃とよく事情が似ている。
日本の国民医療費統計がそれなりの体裁をとり始めたのが国民皆保険以降であることからわかるように、システムそれ自体の整備がなければ、統計自体が推計の領域に入ってしまう。
で、タイの方々に国民医療費の質問をすると、ポカンとされるか、統計自体の不備の議論をするかといったことになってしまう。

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