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医薬品流通事情-日本とタイ 15

(研究員レポートの翻訳に戻ります)

国民医療費勘定についてはその正確性について問題が残されている。1994,1996及び1998年版の数値は平行して行われた他の政府機関の調査と異なっている。その違いはGDPの1%にものぼる。
この問題の分析に当たった専門家たちは、こうした違いは次のような理由によると結論づけている。

  • 1)各調査のコンセプト、定義が異なる。
  • 2)家計における医療費支出推計の統計的な偏差

データの信頼性に問題はあるものの、この国民医療費勘定は、WHOの医療費支出算定ガイドラインに沿ったものであり、OECDにも方法論としては認知されている。
また、こうした方法論自体は3つの期間、14年の調査を通じて持続的に向上し続けている。
データそのものはタイ国医療費支出の参照データとしてWHOも採用している。
これらのデータによると、タイの国民総医療費は、過去10年でみると、タイ国GDPの3.5~4.0%となる。こうした数値が各年によって増減しているのは、タイ国GDP自体の増減による。医療費の対GDP比について、OECD諸国と比較すると、OECD諸国の数値はタイの2倍あるいは2倍以上である。

このおよそ中間にあたる所得層として5,000バーツという所得がどのようなものか。
2009年7月の為替レートでは、1バーツは0.03ドル。
5,000×0.03=150ドル。
これを年間所得に置き換えると、1,800ドル。
一人当たりのGDPの額(8,500ドル)などから考えると、相当の低所得者層だ。

次に、教育水準。
87%が小学校教育で終わっている。

職業別。
63%が農民。
商業(”merchant”という分類)が12%。
これはおそらく零細小売商のことだと思われる。

こうした数字を眺めると、救貧的な制度を拡大していったものといえよう。

ここまでは、1983年に始まった現在のユニヴァーサルカヴァレッジの原型となったと思われるVoluntary Health Insurance with Government Subsidies Projectの説明です。

医療、医薬品関連の主要な出来事としては、1984年にGMPが導入された。
ただ、これは法律的な強制力のあるものではなく、実効性は極めて低かったとされる(タイの事業者に対するインタビュー調査でも、実効性の低さが語られた)。

恒例のごとく、GMPについて寄り道をします。

GMP。
Good Manufacturing Practice。
適正製造規範。

WHOの定義では、「製品が一貫して生産され、その使用目的に適合し、製造承認によって求められるような品質企画に統制されていることを保証する品質保証の一部」。

GMPは、1962年、アメリカで最初に法制化された。
連邦食品・医薬品・化粧品法改正で、薬品の製造規範に関する事項が加わった。
WHOはこのアメリカ版をもとにGMPを作成し、1969年の国連総会で加盟国に対し、医薬品貿易でのGMP証明制度を採用するよう勧告。

日本では、1974年、厚生省薬務局長通知で「医薬品の製造及び品質管理に関する基準」として医薬品GMPが実施された。
通知行政として発足し、当然のことながら、これは事業者の自主管理のものだった。
1994~1995年、厚生省令で製造所のGMP整備が医薬品の製造許可の要件となった(厳密にいえば、私人に義務を課す手続きとして、省令レベルでこうしたことを義務付けるのは適切でないと考えられる)。

2005年の薬事法改正により、ようやく本格的に法制化され、GMPが製造販売承認の要件となった。

GMPの内容は、煩瑣になるので詳述をさける。
発端がアメリカであることからお分かりいただけると思うが、“due-process”の考え方に基づくものといってよい。

もともとdue-processは法律上の概念。
例えば、違法捜査によって得られた証拠は、捜査の過程に誤りがあることから、採用されないといった思考方法。

なので、製品の製造過程がしっかり管理されていないものは、製品としての信頼性につき、相当の疑いがあり、商品として販売してはならないということとなる。
GMP基準には、製造管理、品質管理、手順書などにつき、なにがdueなのかしっかり管理、記録すべしといったことが書かれている。

という日本の経緯をみると、10年遅れの1984年の「導入」はreasonable rangeといえないことはない。

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