医薬品流通事情-日本とタイ 21
病院内の委員会承認。
これもいいアイデアだと思う。
最近、血友病の関係でいろいろ走り回っている。
その中で、血友病のような医薬品でも、毎年、病院の購入委員会といったところの承認をとらねばならないといったボヤキを聞く。
特に、独立行政法人になった大学病院では、複式簿記的な発想がようやく芽生えてきたため、キャッシュフロー、在庫管理というあたりまえのことが始まった。
血友病の例だと、医薬品の価格が高く、在庫管理の面からみて、ロスが生じやすいといったことで、「できれば、扱いたくない」ということらしい。
薬剤師の悪口になるが、某大学病院では、在庫管理ができない薬剤部という陰口をたたかれ、血友病の薬に関しては、血液担当の部門に所管が移されたとのこと。
医薬品メーカーのみなさん、大病院では医師万能説が徐々に崩れつつあるようですよ。
医師さえ掴まえていれば商売になるというアジア的な商法も終焉を迎えつつあるのでは?
上記の4つの効果はどうだったか。
1.のnational drug listに限るというのは、効果ありそうに思えるが、実際は、このリストが“maximum”リストとして機能してしまった面もあり、たいした成果は上がらなかった。
このリストの収載数は成分ベースで、1000~1200というもの。
考えてみれば、日本でも、オーファンを除けば、銘柄別のカウントで大学病院でも概ね1500品目あればよいということ。
(それにしても、MRの営業を鵜呑みにして、往時は、3000を超えていたというのは、ずさんというより、保険料を払っている患者、国民に対する犯罪だと思うのは筆者一人であろうか)
なので、成分ベースの1000という数は、必ずしも、限定にはならない。
理の当然として成果は上がらず、却って、maximum-listとして機能したという分析は正しいと思う。
2.の入院日数の制限。
概ね機能したようだ。
ということは、コストプッシュでの入院日数削減は効果があるということ。
タイでも「漫然入院」という事態はあったようで、医者の勧めにもかかわらず、患者はトットト退院してしまうという事例もあったようだ。
ある地域では、平均入院日数が7日から5日に減少したという例も報告されている。
それにしても、日本の大学病院、例えば京都大学病院などはおそらく漫然と管理し、平均在院日数30日という状態が長く続いていたといったことを考えると、タイの医療はかなり効率的だといえる(DPCといった仕組みを作らなければ、自律的な効率化が望めないというのは、医療のある意味での後進性を示していると思う)。
その原因として、償還制は大きな要素を占めると思われる。
後で償還されるとしても、キャッシュを多額用意するというのは、かなり負担だということだ。
日本の場合、クレジットカードも普及したことでもあり、一種の償還制を取り入れてみてはどうだろうか。財布と相談してみるという側面もあっていいような気がする。
もっとも、窓口負担4割という時期もそんなに遠くないような気がするので、そうなれば、償還制よりも強いマネーインセンティヴが働くのかもしれない。
3.の夕方アルバイト診療への償還の制限
これは、いわゆる使用前、使用後のデータがとれない領域なのではないかと思う。
昔、故渡辺美智雄大蔵大臣が、税務の実態(立ったと思う)について「魚心、水心」的な側面もあるといった趣旨の発言をして物議をかもした例がある。
タイの夕方診療については、病院側がテキトーに(時間ずらしなど)処理してしまったら、わけのわからないことになるのではないかと思われる。
4.私的病院での診療制限。
この効果についてはどういえばよいのだろうか。
数字として発表されているのは、1998年1822billionバーツだったものが、抑制策の実施された1999年には788billionバーツとなったというもの。
削減率は57%。
医療費の世界で57%の削減率は驚異的といえる。
一方で、”life-threatening case”に限るというものがそんなに沢山あるのだろうかという見方も成り立つ。
日本でこうした施策は思いもよらないが、仮に当局がこういう措置を取るとしたら、事実上の受療禁止に近いイメージを持ってのことではないかと考えられる。