医薬品流通事情-日本とタイ 27
次にどういう費用が対象になるのか。
医療費の分類方法は、医療費支給制度と密接な関係があるので、やや煩瑣になるが、タイの医療費分類を列記してみる。
1.健康増進、予防(health promotion and prevention(as directed by guidelines of medical council)
・育成医療
・予防接種
・健康診査
・家族計画
・AIDS予防(母子感染)
・在宅医療
・カウンセリング
・歯科衛生
よくおっしゃいますね、という印象。
タイの人は語れば、そのことをやっているといった錯覚をもちやすいのではないかと思う。
初期、NHSについて、トクトクとこうした給付を並べ立てて、ご褒美前の犬のように、凄いでしょという顔つきをされ、辟易したことがあった。
例えば、育成医療。
とてもではないが、一定の水準に達しているとは思えない。
育成医療といわれてもピンとくる人は少ないだろう。
育成医療制度は、昭和29年(1954年)創設された。
平成18年度(2006年)、障害者自立支援法が制定されたことにより、改変された。
内容。
厚労省の文書の表現を借りる。
「育成医療の概要
育成医療は、身体に障害のある児童又はそのまま放置すると将来障害をのこすと認められる疾患がある児童で、その障害を除去・軽減する手術等の治療によって確実に効果が期待できるものに対して、その障害の除去・軽減に必要な医療に係る自立支援医療費の支給を行うものです。」
必要な医療。
実際にこうした施設に伺うと、かなりショックを受けられると思う。
役所の新人研修の際、新入生は福祉施設での研修(そこで働くことですが)を受ける。
当時、研修担当の方が、肢体不自由児施設などにいくと、女性の場合、自らが出産リスクを負っているということを考えると、相当の衝撃があるのではないかといったことを洩らされた。
先天的に障害を背負い、激しい外科手術を伴うようなことを幼児期に行わねばならない。
具体的にどういうものか。
厚労省の概要に従い、並べる。
・視覚障害
- 白内障、先天性緑内障、斜視 → 手術
・聴覚障害
- 先天性耳奇形 → 形成術
- 高度難聴 →人口内耳埋込術
・言語障害
- 口蓋裂等 → 形成術
- 唇顎口蓋裂に起因した音声・言語機能障害を伴うものであって、鼻咽喉閉鎖機能不全に対する手術以外に歯科強制が必要なもの → 歯科矯正
・肢体不自由
- 先天性股関節脱臼、脊椎側彎症、くる病(骨軟化症)等に対する関節形成術、関節置換術、及び義肢装着のための切断端形成術など
・内部障害
心臓 : 先天性疾患 → 弁口、心室心房中隔に対する手術
後天性心疾患 → ペースメーカー埋込み手術
腎臓 : 腎機能障害 → 人口透析療法、腎移植術(抗免疫療法含む)
小腸 : 小腸機能障害 → 中心静脈栄養法
免疫 : HIVによる免疫機能障害 → 抗HIV療法、免疫調節療法、その他
HIV感染症に対する治療
上記ですべてを網羅しているわけではない。
各項目をみて、あまりの「重さ」に驚かれると思う。
障害、症状により、治療の時期は異なるが、小さなこどもにとって、受難以外のなにものでもない。
横道にそれたが、育成医療一つをとっても、メニューを並べればよいというものではないことはおわかりいただけよう。