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医薬品流通事情-日本とタイ 37

どんな組織でも、随契でやりたいのは担当者の心理。
企業社会では、透明性、ガヴァナンスといった観点から、不明瞭な物品調達は行われなくなっている。
日本の政府組織でも、主として特殊法人を中心として悪慣行があったものが徐々に是正されてきている。

話を医薬品の調達に限ると、タイでは、小規模ロットでの調達(随契)が慣行的に行われている。
タイで、100以上の医薬品メーカーが生き残ってきている原因の一つは、購買者である政府系機関(病院)の随契志向によるものといわれている。
こういう観点で、NHSをみると、NHSがまとまった調達を行うようになっていくと、こうした悪しき慣行は減っていかざるをえないと思われる。

タイでの医薬品調達といったことをタイの政府関係者、マスコミの方々と議論していると、談合だとか、「特別仕様」といった言葉を使ってニヤッとする。
どこの国でも、事態は変わらないようだ。

医薬品の調達に関しては、次のような特則がある。

  • 1.公衆衛生省所管の公的医療機関の調達する医薬品の80%以上は、National List of Essential Medicines(必須医薬品リスト)の医薬品であること。
  • 2.公衆衛生省所管以外の公的医療機関の調達する医薬品の60%以上は、National List of Essential Medicinesであること。
  • 3.GPO(Government Pharmaceutical Organization, 国営製薬企業)が製造している医薬品があれば、公的医療機関はこれを購入しなければならない。
  • ただし、国防省所管の公的医療機関は、国防省製薬工場( Defence Pharmaceutical Factory)の医薬品の使用を優先しなければならない。タイ警察の関係は、国営製薬企業か国防省製薬工場の医薬品の使用を優先しなければならない。
  • 国営製薬企業と国防省製薬工場の医薬品は、標準薬価(medium price)より3%以上高く売ってはならない。
  • 4.必須医薬品リストの医薬品で国営製薬企業が製造していないものについては他のルートで調達できる。
  • ただし、公的医療機関は、入札課程で上記の内容を国営製薬企業にしらせなければならず、仮に、国営製薬企業が製造を開始し、その価格が同等あるいは以下の場合は国営製薬企業から調達する必要がある。随意契約によって調達する場合は、標準薬価(medium price)より高い価格であってはならない。
  • 5.必須医薬品リストの医薬品については公衆衛生省は標準薬価を必ず設定しなければならない。


この調達のポリシーをみると、
・必須医薬品リストの医薬品をできる限り使わせよう。
・国営製薬企業はほぼ独占的に医薬品を供給する位置づけを与えられている。
といったことがわかる。

国営製薬企業、標準薬価ということについては後述するが、一言でいえば、ホンネとタテマエがこれほど乖離しているもの、あるいは、能書きどおりに全くきのうしていないものはない。

少なくとも、医薬品の調達に当たって上記のような製薬がある以上、「国営製薬企業が何故市場を独占できないのか、何故、多数の民間製薬企業が生き残れるのか」という疑問を抱かざるをえない。その理由については、後述するが、一言でいえば、laziness(怠慢)に尽きる。
親方日の丸時代の国鉄と現在のJRを比較して考えてみると、わかるのではないか。

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