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医薬品流通事情-日本とタイ 41

病院内での調達構造。

1.タイでも医薬品の在庫管理は病院薬剤師の仕事となっている。

別稿でも述べたが、日本の病院での在庫管理は、かつて相当低い水準だった。現在でも高いレベルにあるとはいえない。
病院の薬剤部での定番の質問。
 ① 医薬品のアイテム数はいくつか
 ② 平均在庫日数は何日か
独立行政法人となった現在の大学病院では、少なくとも、①のアイテム数はよく把握されている。
余談だが、現在の大学病院会計の担当者の中には、b/s(balance sheet貸借対照表)とP/L(profit and loss、損益計算書)の区別が十分把握できていない方がいらっしゃるようだ。
キャッシュフロー重視といえば、聞こえはいいが、その実大福帳の支出の欄だけを睨んでいるという傾向があるといわれている。

某大学病院の話。
この病院では、血友病の専門医がおり、相当数の患者を担当している。にもかかわらず、購入担当者は、血友病薬が高価であり、一見キャッシュフローに過大な負担をかけることを理由として、毎年、購入必要性を書面で出せと要求する。
血友病患者からみて、大学病院には行ったけど、薬は別のところでもらいなさいということができるのでしょうかということを全く無視しているという問題がある。
摩擦的にキャッシュフロー上大幅な支出超過が起こるから、困るという(おそらく)短絡的な理由で拒否なさるようだ。
この状況をみて、友人の某氏は、「b/sとp/lの区別のつかない輩」と呼んでいる。
宜なるかな(常用漢字ではないので、念のため、ムベナルカナと読みます)。
ともあれ、最近の大学病院ではアイテム数の管理は過剰といえるほどなされている(それ以前は、率直に言って管理なしといってよかったのではないかと思われる。)

②の平均在庫日数。
最近、聞けば聞くほど在庫日数が減っている。
トヨタの看板方式を真似たとおっしゃる。
面倒なので、あまり多くを語りたくない。
ご返答は、3日とか1週間とおっしゃる。
それで、配送はと尋ねると、随時かつ毎日をいうご返答。
これを読んで、おかしいと感じられない方、アブナイですよ。

タイの事情をいうと、私的病院では、薬剤部での在庫管理は、日本より相当マシなレベルにあるものが多い。
特に、配送は、随時かつ毎日などと言おうものなら、相当割高な配送フィーを要求されるというマーケットメカニズムが働いており、そんなバカな要求をする薬剤師はいないといってよい。


2.タイでは、病院内に医薬品調達委員会が設けられ、この承認を経なければ医薬品は購入できない。

医薬品調達委員会(Pharmaceutical and Therapeutic Committee)は院内の複数の職種で構成される。
委員長は医師、副委員長(secretary)は薬剤師。
薬剤師は、採用候補の医薬品のmedical evidenceを作成し、委員会に提出しなければならない。

日本でも、診療報酬点数表に、「機能する医薬品選定委員会」を作り、一定の成果をだせば、点数加算する仕組みを作ってみてはどうだろうか。
ただ、真に機能するためには、製薬企業が作成する原データを読み、正当な評価をするだけの能力のある薬剤師が必要だと思う。
現在の薬科大学では、こうした論文を読みこなす訓練ができているとは思えない。
UCSFなどの教育内容を見ると、論文の評価能力を非常に重視しており、十分に訓練されていることが分かる。
「オレのところにMRが来ない」などという薬剤師が跋扈している現在の日本では、medical evidenceをキチンと用意するだけの能力が欠けている例が多い。
MRに説明を聞くようでは、薬剤師の看板が泣こうというものだ。


3.医薬品の調達に関し、一般のビジネス用語でいう製品仕様書(スペックという和製英語がありますね)は薬剤師が作成する。

前述のように、医薬品の調達のタテマエは、入札。
薬剤師が入札のプロセスにちゃんと関与することとされている。
日本の病院では、調達、入札というと、用度の関係者のみが仕事をしていることが多い。日本の薬剤師は値段、金という点に関しては、薬価大学での薬価に関する講義がないように、恬淡としている(それが、「研究」一筋の薬剤師というスタイルを貫くためにかっこいいと思っているような気がする)。


4.医薬品の入札過程では、タイの医薬品メーカーは企業として財政的にどの程度健全化を示さなければならない。

タイでは、相当数のジェネリックメーカーをインタビューした。
その中で、医薬品の納入について、ある女性経営者が腹立たしそうに、こぼした話がある。
(英語が通じないので、タイ語の会話を研究員に翻訳してもらったもの)
「あんた、わかる?入札のとき、保証金を積まなければならないのよ。」
「どうしてかって?支払が遅れるという前提で、企業としてそれに耐えられるかどうかということを保証金という形でやらなければならないということよ。」

この話、笑えますか?

未妥結、仮納入問題。
他の業界では、理解不能なもの。

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