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医薬品流通事情-日本とタイ 48

先発メーカーと同様に、ジェネリックの世界にも、団体がある。
日本ジェネリック製薬協会。
この所属企業が51社。
沢山あります。
最も売り上げのある企業で年商500億円。
大手といわれるメーカーの品揃えは、100~200。
仮に、500億円の売り上げで、100品目としてみる。
そうすると、1品目当たり、5億円程度の売り上げしかない。
これは、この業界では、優良な方。
例えば、業界中堅のK社。
某Me-too研究開発型企業が買収した。

この会社の売り上げが約60億円。Web-siteで主要製品一覧を数えると、41品目ある。
割り算をしてみればわかるとおり、1品目当たり1.5億円の売り上げ。

生産効率の話をしてみたい。
知人(役人ではありません)のご照会で、第一三共株式会社の小田原工場に行ったことがある。
この工場では、医薬品の原末を生産している。
新薬企業だからアタリマエなのだけれど、ジェネリック企業とはことなり、自ら原末作りに取り組まなければならない。
こうした先発品メーカーでは、1剤あたり100~500億円程度の売り上げがある。
こうした生産規模になると、原材料の購入はトン単位。
継続的に一定期間以上連続操業するため、生産コスト削減はほぼ極限まで行われている。

日本のジェネリック企業では、高々1~2億円の売り上げといった桁。
原末の購入はキログラム単位となってしまう。

某外資系ジェネリック企業の担当者が驚いていたが、仕入の桁数があまりにも異なるため、日本のジェネリック企業の原末仕入価格と比べると、何倍もの開きがあるとのこと。

ここまでは、量的な問題。
生産過程の議論をすると、1億円程度の売り上げの医薬品は、1~2釜が生産単位。
生産プロセスに問題が生じ、おシャカにしなければならないという場合、2釜だと半分だめになる(おシャカ率50%)。
上記のトン単位生産だと100釜単位の生産。
仮に、1釜不具合でもおシャカ率は1%。
日本のジェネリック企業の場合、多品種少量生産。
生産管理をよほど徹底的にやらない限り、途方もないおシャカ率を覚悟しなければならない。
博打的な生産過程といってよい。
サラリーマンならわかると思うが、2釜のうち1釜は使えませんという報告を上司にするのは辛い。
ここで、おシャカにするか、なんとかするかでは大きな違いが出る。
でも、これは医薬品。
なんとかしてもらっては困るのだ。

51社ではどう考えても多すぎる。
役所の幹部の講演を聞くと、以前は10社以内といっていたのが、5社もあればと軌道修正し、最近では1社でも残ればといった議論が聞かれる。

別の稿で触れたいが、日本のジェネリックでは、Me-too企業のジェネリックが最近売れている。
Me-too新薬との抱き合わせ販売がその原因(旧来の「新薬販売モデルの拡張」、彼らにとっては新たなビジネスモデルを考える必要のない、「陳腐」な方法論)。
これに対抗して、どこかのジェネリック企業がMRを増やしてこれに対抗したいといっているようだ。
MRという販売管理費の塊のようなものをジェネリックのビジネスモデルに入れるつもりなら、さっさと退場してもらいたい。
「売ればよい」のではなく、余計なコストをできるだけカットして国民の健康と財布に貢献するからこそのジェネリックだということを忘れていただいては困る。

というわけで、安価かつ安全な医薬品の供給は、衛生規制だけでなく、産業政策的な視点が必要。

例によって長い寄り道でした。

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