医薬品流通事情-日本とタイ 50
日本ではどうか。
大学病院、特に、旧国立大学の大学病院、旧国立病院での医薬品購入価格は日本の病院の中で、最も高い。
いくつか理由がある。
- 1.医薬品の購入が関係者にとって、利権となっている。
- いわゆる口利きの経済。
- 販売側としては口利き料を販売価格に上乗せしなければならない。
- 2.公定薬価制度。
- 大学病院への納入薬価は、薬価調査で最もごまかしにくいものだ。
- メーカーの担当者、医薬品卸業者としては、あらゆる便宜を図り(未妥結、仮納入、担当者接待)、薬価を維持しようとする。薬価維持とは、できるだけ、公定薬価に近い(市場価格としては、最も高い)価格で医薬品を販売すること。
- 3.大学病院経営所の問題。
- 出来高払いである限り(DPCにより、多少事情が変わってきているが)、沢山医薬品を使うことと、医薬品単価そのものが高いことが必要だ。
- 安価な医薬品の場合、薬価差益が少ないことと、売り上げという指標で見る限り、高価な医薬品の方が一見、売り上げ高が上がったようにみえるためだ。
- 往時の大学病院では、BSとPLの区別がつかないどころか、大福帳経営(別名、予算主義)がおこなわれてきたこともある。
タイの大学では、通常の経済原則に従い、購入薬価が安い。
日本では、上記の理由により、経済原則が働かない。
ようやく、最近、医薬品は、病院経営にとってコストであるというアタリマエのことが行き渡るようになった。
この状況変化に最も鈍いのが薬剤部だといわれている。
医薬品の購入取引からの距離が遠く、医師のところへMRなどの関係者が足繁く通うのを指をくわえてみていたという事情。指をくわえてはいたが、多少のおこぼれがあり、このおこぼれがなくなるのは寂しいといった事情によるのではないかというのが某大学の経営企画の関係者の分析。
タイでも、標準価格(Medium price)、参照価格(Reference price)という言葉が使われている。
タイでの定義。
標準価格とは、総理府(”Minister’s Office”玉田先生の訳語に従います。)の規則によれば、政府が医薬品を調達する際、この標準価格より高い価格で調達してはならないというもの。
ただ、すべての医薬品の標準価格が定められるわけではない。
ナショナルドラッグリスト(essential drug)に関してのみ、標準価格が設定される。
標準価格は、公衆衛生省の医薬品医療品供給情報センター(Drug Medical Supply Center)が設定することとなっている。