医薬品流通事情-日本とタイ 51
この情報センターの担当者にインタビューしてみた。
いわゆる薬価調査は行われる。
この調査には、法的な強制力がない。
とにかく、薬価に関するデータを集める。
で、集めたものはとりあえず、参照価格として公表される。
これを統計的に処理して、標準価格が設定されるのだという。
研究員ともこのインタビューについて議論してみたが、実際は公的病院での購買価格がそのまま標準価格になってしまっているのではないかと思われる。
関係者の議論を総合してみると、薬価調査がキチンと統制のとれた形では行われていない。時系列に整理して示されるわけでもない。直近の市場動向を殆ど反映していない。
タイではよく言われることだが、「制度はある、一応なんらかの作業もなされている、しかし、結局、無意味」ということの典型がこの標準価格の実態。
後述するが、国営製薬企業(Government Pharmaceutical Organization : GPO)がこの国では存在する。
この会社にはいろんな特権があり、それだけを聞くと、タイの独占企業だと思ってしまう。
実際は独占から程遠く、単なる1プレーヤーにすぎない。
日本でも、親方日の丸の企業はダメだといわれた。
このタイの国営企業が何故だめなのかは、一言でいうと、怠惰、働かないということに尽きる。
公的病院は、いい加減であるにせよ、上記の標準価格を超えて医薬品の調達ができないが、この国営企業(GPO)から買うときは、標準価格を3%上回ってよいとされている。
こうしたことについて、タイの研究員はこう書いている。
The regulations are obviously truly not supporting the growth of the industry or the free competition within industry.
「こうした規制は、明白かつ真に、医薬品産業の発展やこの分野での自由な競争に寄与していない」
日本の場合、薬価調査は日本的厳密さで行われる。
その中で、この薬価調査をくぐり抜け、いかに薬価を維持するかも同じく日本人的勤勉さで行われている。
日本の場合、薬価は保険の償還価格だ。
薬価調査のくぐりぬけは、国民の保険料の詐取といってよい。この業界にいやしさを感ずる方がいるとすれば、その卑しさはこうしたところから発するといってよい。