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医薬品流通事情-日本とタイ 54

グループⅡ
このグループは、基本的には外国製薬企業の医薬品について、日本風にいえば、医薬品卸的な役割を果たしている。
異なっているのは、製造部門を持っていること。
外国製薬企業のために、マーケットの拡大、配送を担う。
提携医薬品企業の規模、業態が異なることもあり、相当大きな規模のものから、そうでないものまで多様な形態をとる。
扱う商品は、通常、自らのジェネリック医薬品、外国ジェネリック医薬品。
いくつかの企業は、先発品も扱う。
市場としては、すべての医療機関(病院、診療所、薬局)。
地域もバンコクとそれ以外の地域(up-country)ともに対象とする。
一種のエージェント業務ともいえ、どういう市場にどういう商品を供給するかという通常の経済原理に近い行動をとる。
健康関連という視点もあり、栄養、美容といった分野の商品も扱う。

グループⅢ
このグループは、ニッチマーケットを志向する。
1990年代からの衛生規制、医療費保障制度の大きな変化に対応したものともいえる。
日本風にいえば、ゾロ薬品をつくるといったビジネスモデルが衰退していく中で、タイに導入されていない商品を扱うというのはロジカルな反応であるともいえる。
そうしてこんなことが起こるのか。
いくつかの仮説がある。
もっとも当てはまるものとしては、タイは医薬品販売の主戦場ではないということだ。
日本ですら、世界のジェネリック企業からみれば、優先度第3位の市場。
まず、北米、次にEU.
この2つの戦場の帰趨がみえたところで、ようやく日本市場を視野に入れる。

こういうふうに考えると、タイはかなり優先度の落ちるマーケット。
少し目先がきいた方々にとっては、バイオ、ガンなどの分野で、タイに全く導入されていない商品を見つけてくることはそんなに難しいことではない。
経過的なビジネスといえる。
しかい、よく考えてみよう、日本でも本質的には経過的なビジネスと思えるものが恰も永劫なものであるかのような存在になっていることがいかに多いか。
日本のジェネリック医薬品ビジネスは、世界市場の中では、世界的な企業が本格上陸するまでの経過的なものだといってよい。
日本の当事者は、そのように思っていない。政府が非関税障壁をもって「守ってくれる」という意識のなんと強いことか。
似非新薬の製薬企業にいたっては経過的なビジネスと呼ぶのもはばかられるが、当事者関係者にとっては永劫に続く「神聖」なもののように受け止められている。

グループⅣ
Multiの先発医薬品企業。
先述したように、タイの国内企業としては、ジェネリックメーカーしかない。
特許前提の新薬販売メーカーは、外国籍の企業という構造。

こうしたメーカーは、タイでかなり早くから商売をはじめている。
タイへの進出初期段階では、製造、配送ともに自ら行い、タイの業者を使うことは少なかったようだ。
1980年代ごろから、製造に関しては、よりコストの安い国に拠点を移しはじめ、現在では先発品メーカーのタイ工場はほとんどないという状態。
配送に関しても、いわゆるin-house処理をやめ、専門の配送業者にアウトソースするようになり、今では、専門の配送業者がほぼ前面的に担当している。

このグループの企業は、タイでの特許が整備され始めた1980年代以降、販売高を飛躍的に伸ばしていった。
2000年以降、タイでも医療費抑制が意識され、数々の抑制策がとられたが、能書きどおりの効果を上げていない。

先発品メーカーの場合、売れるところにキチンとフォーカスしてビジネスをやっているという特徴がある。
簡単にいえば、金払いがよい集団にしっかりと照準をあわせて効果的な販売活動を行っているということ。

タイの医薬品セールス活動は、極端に医師に集中している。
先発品目メーカーの場合、原資があるだけに相当額の販売費が医師層に対して割り当てられている。
先述したように、国際学会では、発表もしないのに、タイの医師が沢山参加する。この参加旅費は、すべて医薬品企業持ちだ。
販売費をキチンとかければ売れるのだから、簡単なビジネスモデルだといってよい。

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