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医薬品流通事情-日本とタイ 55

次に、国営製薬企業を見てみる。

タイには、いくつか国営製薬企業がある。
例えば、防衛省製薬工場、大学内での少量生産など。

ここでは、生産高では、国営製薬企業のほとんどを占める企業に絞る。
何回かご紹介したGPO(Government Pharmaceutical Organization)がそれだ。
タイではほとんどの人が顔をしかめたり、苦笑いしながら、皮肉な調子で “GPO”という。適切な訳語を考え付かない(直訳すれば、「政府製薬機構」とでもいうんですかね)こともあり、この稿ではGPOということでお願いしたい。

まず、研究員の言葉。
Established to be a supplier of pharmaceutical and medical products to secure public health of the nation, GPO is unique in many senses and should be considered as a remarkable being in Thai pharmaceutical business scene.
未熟な国内産業を背景として、国民に医薬品を安全に安定的に供給するための国営企業。
ま、タテマエとしてはよくある考え方。
読者諸賢がおわかりのとおり、国営医薬品企業というのはそんなによくある話ではない。


1.GPOとはどういう企業か。

GPOは、1966年(佛暦2509年)のGPO法によって設立された。
当然のことながら、公益目的のための企業体だ。
資本金は、全額タイ政府が出資している。この資本金のほかには運営面などについての政府援助金はない。
公益目的の企業だが、おかしなことに相当程度の利益を上げており、年間利益の35%を政府に入金している。
GPOはたてまえとして、バイオ分野にいたるまでの研究開発も担うことになっている。
実態は特許後の医薬品、ジェネリック医薬品の製造メーカーにすぎない。
事業のモデルは、製造のほか、販売、マーケッティング、配送も自ら行う。


2.GPOに対し、どのような特権が与えられているか。

  • 1)過去、GPOは製品登録諸の提出を求められていない。現在でも、製造に関する書類の提出が遅れても良いとされている。
  • 2)公的医療機関は、GPOの製品を購入しなければならない。さらに、公的医業機関は、GPOが製造を他の業者に委託した製品もGPOの製造品として購入しなければならない。
  • どう考えてもおかしいのは、GPOが他の業者から購入した製品に関しても同様の購入義務があることだ。
  • この場合、GPOは5%のマージンを抜いてよいことになっている。
  • 3)GPO以外の民間製薬企業は、標準価格(medium-price)以下で商品を販売しなければならない。
  • これに対し、GPOは標準価格を3%までは上回って販売してよい。この場合でも、公的医療機関では、GPOからの購入義務がある。
  • 4)GPOは、国営ではあるものの独立した企業体。
  • にもかかわらず、政府と極めて密接な関係がある(人事面を含め)。
  • 公的医療機関とも密接な関係があり、公的医療機関に対し、どのような医薬品需要があるかの調査結果(価格、数量データを含む)を提出させることもできる。


凄い特権です。
これを初めて耳にしたとき、GPOが市場を独占しているはずだと叫んだ。
どう考えても、民間企業に負けるはずはない。

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