医薬品流通事情-日本とタイ 56
再び、研究員の文章を借りる。
Why can’t GPO monopolize the market, then?
The simplest answer would be because GPO does not work efficiently and, therefore, fail to bring its privilege to its advantage or use it to beat other competitors off the market.
もっと端的にいうなら、怠惰であるということに尽きる(らしい)。
では、何故、怠惰で非効率なのか。
1)GPOは高コスト体質だといわれる。
高コスト体質の主たる原因は、人件費。
給与水準が高く、福利厚生も手厚い。
このことは、国営企業全般の問題だといわれている。
2)効率性にも問題がある。
例えば、GPOはin-houseの配送を行っている。
民間企業のでは、時間どおりの配送が行われるのが当然。
これに対し、GPOでは、配送自体の信頼性が低く、時間どおりなどということは夢のまた夢という状況。
3)GPOの経営陣は、概ね5~6年ごとに交代する。
安定しないタイの政治に左右されるというのが一番の原因だが、経営の継続性に甚だしく欠けるということとなる。
4)GPOは、その使命からして、少なくともnational essential drugは製造すべきだと思われる。にもかかわらず、これはという医薬品ですら、製造されていないことが多い。
多くの理由があると思われるが、次のようなことに帰結すると考えられる。
- a. 新薬の開発を旗印に掲げながら、開発成果が一切出ていない。
- この結果、タイ国内でしか売れないジェネリック企業になっている。
- 民間のジェネリック企業と同じであるなら、こうした企業体を維持する必要は全くない。
- 企業体としての明確な使命がないということであれば、特権の上にあぐらをかく怠惰な企業文化ということになってしまう。
- b. 現実の工場施設も需要とかけ離れたものしか作られていない。一言でいえば、悪しき官僚主義。紙上の計画で事足れりという現場、現実を無視した操業が行われている。
日本では、郵政事業のうち、保険、金融事業については、民業とどう違うのかという観点から、民営化が行われた。
この稿を書いている時点では、こうした本質とかけ離れた「見直し」が行われている。脱官僚といいながら、もとの官僚主義的な郵政事業運営に戻るのならば、よしていただきたい。
過疎地へのサービスに問題があるともいわれる。
だが、過疎地そのものをどうするかという問題をホッテオイテ、過疎地への郵政サービスだけは確保しようという論理は理解しがたい。
そもそも、特定郵便局などのサプライサイドではなく、そうした地域住民からどうしても郵政事業だけはやめないでくれという真の声があったのだろうか。
いわせていただければ、全国津々浦々まで完璧なインフラを整備する国家的な体力などない。
不便をしのんでまでこうした地域に住みたいというのはわかる。しのんでいる人にまでサービスを供給しようとするのは、論理だけの問題。
インフラ整備としては、過剰品質といってよいのではないかと思う。
脱線してしまいました。