医薬品流通事情-日本とタイ 57
で、このGPOというところ、タイの国民からどのようにみられているか。
まず、医師。
タイでは、医師は「新薬」を使いたがる。何故なら、先述したように、先発企業からは、公私ともに手厚いサポートを得られるからだ。
というわけで、医師はGPOに対しては、知らないか無視しているという状態。
次に、薬剤師。
薬剤師は、医師と異なり、単なるMRの営業対象ではない。
むしろ、医師の要求と病院収支の狭間にいる。
特に、公的病院では、限られた予算の中で、ジェネリック医薬品にシフトせざるをえないという状況の下、四苦八苦しているといってよい。
(出来高払いの公務員相手のことしか念頭にない薬剤師は、日本と同様、のほほんとしている。)
こうした立場からいえば、医師が好む「新薬」より、GPOの方がまし(ジェネリックという意味で)というのが薬剤師の一般論といえる。
また、GPOのタテマエ”public and non-profit”を能書きどおりに信じる向きもなしとはしない。
とはいえ、GPOとお付き合いするのはイヤだという薬剤師も少なくない。
理由は、
1.製品やサービスの質に問題がある。
2.GPOの製品価格が不適正だ。特に、GPOが仲介したために価格が高い。
具体的には、標準価格より3%高く、5%の配送コストまで請求される。
*通常の配送コストは2%程度。
以上は、ロジカルに分析した場合の状況。
心情としては、タイの国民性として、GPOがあるから仕方ないということだと思う。正論をいって、民間企業との軋轢を増してもつまらない。そもそも、法律で買えといわれているのだから、といったことが気持ちの分析。
GPOに関する新たな環境変化は、UC(ユニヴァーサルカヴァレッジの医療費保障制度)の存在。
UC制度は、人頭払いという一種の頭打ちの制度を導入している。
GPOの使用強制と病院の経営管理とが矛盾した場合、どちらを優先するかという問題がある。
法律制度としては、両者の間に調整規定を置かなければならない。
タイの場合、結果として、この調整は各病院の「解釈」に委ねられている。
GPOでのインタビューでは、「民間事業者と同様入札制度の中で活動している」とのお答えだった。
この担当者が現場を知らないのか、無責任なのかはよく分からないが、民間の製薬企業は、今のところ「単なる戯言」と受け止めている。