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医薬品流通事情-日本とタイ 59

モデルⅡ : 外資系企業から診療所、薬局

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タイでは、外資系製薬企業は開業医市場、薬局市場を重視していない。
にもかかわらず、どうしてこういうマーケットが生まれるのか。
理由は、タイ独特の医薬品流通があるからだ。
薬剤師の職能を真っ向から否定する仕組みがある。
抗生物質など(日本風にいうと)医用医薬品が処方箋なしに薬局で購入できてしまうのだ。

さすがに、これはタイでも適切ではない。
だが、何の違和感なく動いている。
これを問題にする人もいないようだ。
というわけで、タイの患者は病院で処方された薬が欲しければ、薬局に買いに行く。
タイ流のリフィルシステムといえば聞こえがいいかもしれない。

なぜ、こうしたことが起こるか。

公的病院の途方もない混雑の中で、薬を買うためだけに長時間並ぶよりも、手近の薬局で手に入るのならば、少々お金がかかってもいいとい考え方。
外資系製薬企業は、各々の薬局に対する直接の営業活動は殆ど行わない。
平らかに考えて、散在する独立薬局を一々営業経費をかけてやるというのは、タイでなくともあまり効率のいいものではない。
外資系製薬企業の主たるターゲットは医薬品卸業者。
外資系製薬企業にとって、病院の分野では、配送業者が唯一のチャンネル。
薬局の分野では、卸売業者。
卸売業者のルーツを辿ると、独立薬局として始められたものが殆ど。
規模を大きくすることができた薬局は、いわゆるバイイングパワーをつけていく。こうなると、仕入れた医薬品を他の薬局に転売するといったことが可能になる。
これが形成過程。

なぜ、大手の流通業者が手を出さないのかという疑問。
タイの場合、大手の流通業者にとって、零細薬局に対し、一々まともに流通ルートを確保するということは、コスト面から見合わないとされる。
零細薬局への配送は、ジャングルのゲリラ戦に似て、正規軍が真正面から取り組むには、困難な面が多いといえばよいだろうか。
いずれにしても、成り上がり卸売業者は、大手の間隙をついて、薬局流通ビジネスモデルを作り上げた。
卸売業者は、自らのテリトリーで、必要量を仕入れる。
この仕入価格自体は、大手配送業者が直接各薬局に対して提示する価格より高いかもしれない。
ただ、卸業者のゲリラ的流通網では、流通コストを入れると、結局、ゲリラ薬局に対し、安い値段で医薬品を供給できる。
日本でいえば、バッタ商売に似て、卸業者と各薬局の取引は、「現金」、キャッシュ。
大手配送業者の支払サイトは、3ヶ月。現金商売がベースであれば、30日以内の支払が可能で、その面からも、大手配送業者からはディスカウントを期待できる。

苦労話で恐縮だが、これがわかるまで大変だった。
まず、どうなっているかわからない。
当事者も適切な説明をしない。
理由、経緯となると、各パーツが整合的に組み合わされた形で説明できるまでなかなかいきつかない。

開業医の場合は、基本的には、零細薬局と同様、卸売業者が流通過程の主役。

開業医といっても、タイの公的医療機関の医師は、正規の勤務時間を終えると、勤務場所で、自らのリスクで診療を行ってよいことになっている。
前述したが、公務員の兼業制限は行われていない。
自らが勤務する病院の一室で、アルバイトをしてよい。
この場合の医薬品流通ルートの主役は、MR。

理由?
第1に、医師、MR双方ともその方が便利だと思っている。
第2に、MRにとっては、売り上げを増やすという実利がある。
第3に、製薬企業にとってもMRにとっても、医師と特別な関係作りができる。
    (日本も大きく変わらないように、タイでも医師との関係作りは肝心なこと)
第4に、医師が使えば、最終的には病院全体での採用率が高まる。

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