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DPC 11

診療報酬体系見直しの必要性の高まり(2)


で、保険とその適用という問題に帰ると、まず、この治療の開発の初期段階、日本では、放射線医学総合研究所でしか治療を受けられない。治療効果については、理論的にはわかっていたものの日本での臨床例はない。医療費としては積算の方法すらない。といった状況では、医療保険の枠内での議論が難しい。
現在、この重装備も、上記のほか、筑波大学陽子線医学利用研究センター、国立がんセンター東病院、静岡県がんセンター、若狭湾エネルギー研究センター、兵庫県粒子線医療センターにも置かれるようになり、一定範囲での汎用性が生まれた。
この段階になると、「いつでも」、「どこでも」、「誰でも」という保険原則にかなり近くなる。
かなり近いが、もう少しというものが先進医療だといってよいと思う。

この場合の費用負担は次のようになる。

  1. 「先進医療」そのものの費用は、全額患者負担。
  2. 1.以外(一般保険診療と共通する部分)の費用は、通常の保険診療と同様、一部負担金を支払う。

数字の話なので、具体的な金額例でみてみる。
総医療費=100万円。
このうち、先進医療分が20万円。
一般の保険診療分が80万円。
一般の保険診療分は、通常3割が患者負担=24万円。
この場合、20万円+24万円=44万円が患者負担となる。
先進医療でない一般の保険診療だと、100×0.3=30万円が患者負担なので、この例では、先進医療であるために、14万円余計に負担する結果となる。

どうして余計に負担するのか。
先進医療は金次第なのかという角度の議論もあろう。
この方法が最も合理的な方法論とはいえないだろうが、新医療技術を保険制度の中に取り込んでいくためのステップとしては、「次善の策」といえるのではないだろうか。

○診療報酬体系の機能
 1.医療機関の収入源    → 医療機関の経営に影響
 2.医療費の配分      → 医療機関間の医療費の配分に影響
 3.医療サービスの提供促進 → 医療提供体制のあり方に影響

お医者様がたと「医療について議論をしよう」といった場合、その殆どが医療費、診療報酬点数表の話になる。
この国で、医療それ自体が語られることが少ないのは、診療報酬点数表という「告示」で医療がコントロールされていることと無関係ではない。
別のところでも取り上げたが、看護師の取り合い競争といった騒ぎは、医療、特に、病院医療について治療上の必要性から起こったものでなく、「告示」の世界で看護師が多いと有利だからということにすぎない。
「うちの病院では、8:1でもちゃんとやれる」といってみても、診療報酬が入らなければ「吠えているだけ」。
保険の考え方では、診療そのものの内容を把握しきれない以上、看護師の配置基準といった「外形」基準に従って支払わざるをえない。

日本調剤の三津原客員教授が医薬分業を分析して、「経済誘導」により医薬分業(院外処方)が伸びたのであって、なんらかの医療上の要請に基づいたものではないと断じられたが、なにも医薬分業だけではない。
診療報酬点数表は、「経済誘導」の手法でこの国の医療をコントロールしている。

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