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2010/02/04

博白 08

今回は、糖尿病。
お題は、「糖尿病について知るところを述べよ。糖尿病で死に至るケースとはどんなものか。」

珍回答から。

「糖尿病で死に至るケースとは糖尿病そのものというよりも糖尿病の悪化による合併症で起こる癌等が原因である。」
是、是、是非、来年度の学会でご発表を。

優等生の答案などというものは見たくない人が多い。

次の回答は、良を差し上げた。
優等生の回答というより、四苦八苦しながら、よく書けましたという意味で。

「糖尿病の薬を健常な人が飲むと死に至る可能性があり、大変危険である。糖尿病自体で死に至るのは、(インシュリンの)出すぎのために体内の糖量が極端に下がった場合かと予想する。―――そのため、薬はむやみにつかうべきではない。」
何故、これが「良」なのか。
「予想する」などというのは、あんまりではないかという向きもあろう。
良としたのは、「糖量の低下」、「薬はむやみにつかうべきでない」という2点。
一般論として、薬剤師さんは、処方箋が来れば自動機械のごとく患者に薬を手渡す。そのため、病気の治療とは投薬であるという観念が深く浸み込みすぎているフシがある。
医学部の教授の方々と議論する。
「薬や手術は、医療として最終手段」ということを徹底的に叩き込むのが医療の第一歩だと断言される。
そういう角度からこの回答をみると、医療あるいは治療ということについての繊細さが感じられる。
もっといえば、薬だけに向き合うという弊を逃れ、患者さん、症状をきちんとみようという姿勢が感じられる。
3年前の講義の際の「処方箋が無ければ薬剤師としては何もできない」といった恐るべき傾向からみれば、giant-leapではないか。

次の回答は、5分間エッセイを書かされるとわかり、予習が当たったもの。

「膵臓から分泌されるホルモンであるインスリンを投与することで症状を和らげられるが根本的な症因を取り除くことはできない。」
薬で病気が治る、という単純な受け止めから何歩も進んでいる。
期末試験を含め何枚もの答案をみてきたが、「根本的な症因を取り除く」というフレーズには初めてお目にかかった。

平均的?な理解の回答もご紹介しよう。

「血糖値が下がらない病気で、暴飲暴食でもなるが、そうでもない場合でもなることがある。」
文学部の学生の叙述に近い。
3大生活習慣病の一つで潜在を含めると、1000万人の患者がいる糖尿病という疾患も薬科大学の学生ですら、こうした理解であるともいえる。

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