2010/04/13
博白 22
いきなりでは厳しいと思いますが。
(健康に自信のない向きは、以下の文に目をとおすことを回避することも一つの考えです。)
「今までは、医薬分業が進んでいなくて、医師が院内で調剤を行っていたのだが、最近は、高齢化も進み、医師がしんさつする患者の数も増えて医師だけでは、薬の調剤ができなくなり薬剤師の活躍の場が増えたのだと思う。」
1年生です。
この御仁は、また、次のように述べています。
「院内で調剤をすると、どうしても医師の力で薬剤師の思ったとおりの調剤や、医師の力があるので薬剤師は自分の意見を通せないという現状であったのだが、院外で調剤――」
文が途中で止まっているのは、時間切れのせいです。
何かを書かないと減点というプレッシャーのなかで破れかぶれとはいえ、ここまでくると、読まされる方も「気付けをダブルで」といいたくなる。
大阪弁でいうと、「ダブルでんな」ということですが。
少しだけ、この強烈な文章を分析する。
1.「いままで薬剤師はたいして活躍していなかった」という認識。
2.調剤の実権は医師にある。
3.医師に面とむかって議論するのは難しい。
4.病院の外では薬剤師が思い通り調剤できる。
といった思い込みがあるようだ。
一言でいえば、医療の中で、薬剤師はどこに位置しているのかという点で、論理、感覚を喪失したところで無理やり議論している(何が一言なのだ)。
冷静に事態をみちゃいましたというものをひとつご紹介しよう。
「しかし、現実は院内調剤にしろ院外調剤にしろ薬剤師が処方せんをよりくわしくチェックできるか否かは疑わしいところがある。
その上、院外調剤にすることで、今までは病院内でうけとれた薬を病院の外まで取りにいかねばならないという足労を患者にわずらわせることになる。」
ネットか何かで、医師会による批判サイトをみてしまったのでしょうか。
であるとしても、短時間でメモもみずにこのリーズニングをするというのは結構なことだと思います。
経済ということを強く意識しすぎたものでは。
「病院内の混ざつを避けるため、または利益・不利益の問題。
病院内でのしんさつの回転率をはやくして、より多くの患者さんをみることができるようになる。」
そうですな。
一昔前は、神風診療などという言葉もありました。
数をこなせば診療報酬収入が増えるというそれだけの理由で診察しているなどということがマスコミを賑わせました。
3時間待ち3分診療などというのもありました。
患者の顔がレセプト、証券にみえるというのでは困ったものです。
学生さんは若いので、結果的に、素直に、オトナたちの金儲けを批判してしまう。
だからといって、こういうことを受け入れるのがオトナへの途などと思わないでほしいもの。
余計なことだが、医師、看護師さんに比べて、モノ中心の日常を送る薬剤師さんはともすれば、医療は「患者さん」に対する「サービス業」というところから離れてしまいがちになるのではないか。
先日の出張で、患者さんのケース記録をまとめ、チームでの判定会議にかけるという作業をされている看護師さんと話をした。
この作業は「タダ働きです」とおっしゃる。
何の評価もされない。
患者さんの医療のために必要だからやる、というだけ。
その場での議論としては、「こういう形の努力をする度合いの低い」のは、「申し訳ないが薬剤師さんだ」と言われた。
医療現場では無償の行為をやらねばならない。
(重要な行為なのに点数評価をしないという例があまりにも多い。)
今後の医療の方向としては、外形基準あるいはモノというだけでなく、上記のケースマネジメントといったソフトウエアをちゃんと評価していかないといけないと思う。
ひねた言い方だが、声が大きく一見もっともらしいものにあまりにも過大な評価がなされ、当のご本人は大変な苦労があるにもかかわらず、「この仕事に対する点数評価ということは考えたことがなかった」という事例はそんなに少なくない。
上記の学生さんがいう「回転率」といったわかったふうなことだけでは、医療は成り立っていない。