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2010/04/15

博白 23

次のお題。

「世界的なジェネリック医薬品企業の医薬品が日本でほとんど使用されていないのは何故か。(世界一位のジェネリック医薬品企業のテバは医薬品売上高約1兆円。日本一位の沢井薬品は400億円)」

このお題では、よくできましたが5人。
教室でイジラレルという否定的な評価を受けた人が3人。

先入観を持ちようがない出題。

「良」を差し上げたものから。

「ジェネリックに関わらず、日本では医薬品に対する認可が下りるのが遅い。―――
先進国の中で最も遅れているーーーーまた流通の問題で、国内さんものものを普及させるためでもある。国外の企業を入れてしまうと、経済破たんにつながりかねない。」

いずれにしても、鋭い。
関係者が切歯扼腕していることやあまりホンネすぎていえないといったことをサラりと書いてしまっている。

現場の薬剤師さんには相当耳に痛いことをさらりといってのけたもの。
「ジェネリック医薬品は、薬剤師が管理するときに覚えているのが難しいというのと従来の医薬品とジェネリック医薬品の両方を持っていると、管理する費用が高くなってしまうからではないかと思う。」

この方は、薬剤師のジェネリック医薬品知らずを計らずも当ててしまっている。
それに加えて、薬剤師と「管理」という問題にズカズカと踏み込んでいる。
医薬品卸業の知人に言わせれば、「病院には管理の概念が乏しい。なかでも、薬剤師さんの領域では管理という概念が全くない」ということになる。
在庫が多いということは余分な金利を払っているのと同じだということがわからない。
(この辺りのことは別稿でさんざん述べたので、これくらいで)

次のものは、筆者の大好きな箇条書きで、かつ異常に鋭い。

「・提携を結んでいない(企業同士の)
 ・国の政治的な問題(法律、条令などジェネリックを使用するのに必要な項目が世界の動きに追いついていないと思われる。
 ・現存するジェネリック医薬品でない医薬品の処理のためにあえて輸入をしていない。」

どうです。
現代を知らないノストラダムスの予言のごとく、現世を知らない学生が現実を切ってしまっている。

提携の議論は、日本のジェネリックメーカーの独りよがりな面。
世界の動きの項は、harmonizationと日本の医薬品行政。
医薬品の処理の議論は、長期収載医薬品のことか。

この回の彼の筆の走りは神域であったといってよい。
(残念ながら、降臨はこの回限りだった。)

減点こそしなかったけれど、悪例として講義の場で引用したものを紹介する。

「ジェネリック薬品は治験が行われていないため、一般の薬品より安全性が確かとはいえない。日本人は他の国に比べ、慎重な人が多いので。
ジェネリック薬品ばかりおしすすめると、新薬を改(?)発するための予算が足りなくなってしまう。」

こうした議論は、オトナの薬剤師さんの世界でも根深く残っている。
こうした方々は、言葉を極めて恐縮だが、科学としての薬学を学んだのだろうか。
「医薬品には治験が必要」とのみ理解するのは、幼児的な理解で、科学者のそれではない。

もう一つ。

これは、予習はしたが、ネットを覗き見し、それをパクッタものではないかと思われる。

「ジェネリック医薬品は確かに安いが、その薬そのものが前にでていたものと全く同じではないらしい。
試験管内での試験しか行われていないため、実際に人が服用した時に添加物による副作用があったり、腸での吸収が異なっていたりと、様々な問題があるため、日本の医師はジェネリックを避けるのではないかと思う。
また、消費者にとっては経済的なジェネリックも医師・薬剤師にとっては利益を減らし薬の種類が増える事で負担を増すことになる。」

凄まじいものですな。

ただ、「また、消費者云々」の部分は、「卓見」といってよい。
こうしたことがファーンと浮かんでくるというのは、若さのもたらす直感ですかな。

(筆者が予備校生の頃、おもしろい英語の教師がいた。
 彼の口癖。
 若さーーー馬鹿さ。
 上記の文の前段は、「馬鹿さ」。
 後段は「若さ」。
 スンません。
誰もわからない楽屋落ちで。)

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