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2010/06/02

博白 25

アメリカの病院

これまでいくつかのアメリカの病院をみてきた。

今回、テキサスに行った。

複数の病院を持っている方とお話ができた。
以下、その方のお話や紹介の過程で感じたことを記します。

そもそもの話として、アメリカの医療機関は、営利でも非営利でもよい。
非営利というのは、日本でいえば、済生会病院の論理で組み立てられている。
といっても、すぐピンと来る方も少ないだろう。

済生会は、いわゆる無料低額診療を行うため過去税法上、特別の扱いを受けてきた(一部無料低額診療をやるから、全体的に税制上の優遇という形があった)。

アメリカの場合、無料低額的なチャリティー診療を行う(利益がでることが想定しにくい)ということから、法人全体が非営利というスタイルをとる。

ということは、アメリカでは、医療もビジネスであり、インダストリーだというのがそもそもの前提。

病院の場合、システム、組織、事業という観点から、他の産業と同様、マネジメントがあるのが当然であり、そのマネジメントはプロの手で行われなければならないとされる。
日本のことを思わなければ、そうだよねと思える(ような気がする)。

医師を含めたマネジメントの議論をする中で、ある医師が「医師をマネジメントの代表者とすることも重要だ」という趣旨の発言をなさる。
ということは、医師がマネジメントの代表者である確率が極めて少ないということ。

ともあれ、アメリカでは、医療の世界でもMBA取得者であるチャキチャキの若造が経営のイニシアティヴを握るということがごく普通に行われている。

FACHEという資格もある。
これは、Fellow of American College of Healthcare Executiveというもので、
病院の経営陣に加わるための一種の資格という性格。
(詳しくは、アメリカのwikiなどを見てください。)

営利であれ、非営利であれ、マネジメントは経営の専門家がやる。

「少しのことにも先達はあらまほしき事なり」で、今回の議論でも、おもしろいことを聞いた。

非営利と営利の2つの病院の関係者と意見交換を終えた後で、今回のケースでは先達となる冒頭の複数病院所有者が言ったことは実に印象深かった。

「非営利病院というのは、変だよね。」
「どうして?」
「だって、チャリティーの趣旨から寄付金を集め、収益を出せないことと、余剰金が出ると翌年からの寄付金が減るという理由で立派な会議室や無用に贅沢な理事長室を作ったりしているじゃない。」

筆者はあまり耳のいい方ではないので、正確な聞き取りができていないおそれもある。

上記の彼が言いたかったことは、自らが関与している非営利と営利の病院を比較して、非営利の方が効率を欠く場合が多いということ。

これはそのまま日本に当てはまるとは思えないが、含蓄のあるもの。
彼は、自らが深く関与している営利病院を愛しているフシがある。
この病院は、数年おきにリノベーションを行う。
必要かつ充分な建築でよく、華美かつ高価な建築材料はいらない。
減価償却などの企業経営で当然のことは必ずやる。
医師の仕事は診療であり、余計なことはやってもらう必要はない。
働かない=患者の役に立たない医師は去ってもらう。
こうした企業経営として当然のことを行うため、合理的な経費、効率的な診療ができる。
患者のためになるのは、営利病院である、というご託宣。
さらに、オバマ改革により、チャリティー事業の論理的基盤の一つを失った非営利病院はその数を減らしていくだろうとの予言。
ちなみに、現在の営利と非営利の比率は半々とのことだが、彼の見通しでは、10年以内に殆どが営利病院ということになるだろうとのこと。

この稿は、もともと、非営利病院の収支バランスはどうなるのかという素朴な疑問から書こうと思った。
なぜなら、病院経営のプロたちが、非営利病院では「ドネーションをいかに集めるか苦労している」といい、その不安定なドネーションで収支の辻褄をいかに合わせるのかわからなかったから。

上記の彼によれば、必要以上に集め、あまりそうになったら、経費として使ってしまうから、ということらしい。
非営利の論理的な矛盾?

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